2012/02/10

オンデマンド製本はここまできた。

「page2012」は印刷業界のイベントなので、会場では印刷機器の展示もあるのですが、大物印刷というよりも身近なものを印刷する機材が中心という点では、デザイナーやクリエイターなどものづくりに関わる人が見てもおもしろいイベントになっているのではないかと思います。

そういう中で、さらにフリーランスライターという職業から見て興味深かったのは、オンデマンド製本技術の進化でしょうか。少数部数印刷のニーズが増えているのか、会場ではあちこちでサンプル展示がありました。

展示ホールCでは、ホリゾン東テクノ/西コンサルが文庫本のオンデマンド製本デモをやってたのですが、サンプルを見るかぎりでは、中身は文庫本の雰囲気そのまま再現することにほぼ成功しております。問題はあのツヤツヤした表紙まわりなのですが、こちらはそれに合わせたデザインをする、あるいは紙質を変えることができれば、既存の出版物と遜色なく売れるのではないかと思いました。

オンデマンド書籍販売というのは、インプレスが積極的に展開するなど、すでにある程度市場ができあがってるところ。ビジネスとしては10年以上前からあるものなので、それなりの品質と価格とスピードが実現できれば、さらに市場は拡げられことでしょう。

たとえば、出版したい人と編集のプロと製本のプロが組んで、1000部単位の本を売る、というビジネスモデルは年内ぐらいからどんどん出てくるような気がしました。

製本のバリエーションにしても、かなり柔軟に対応できる技術を持った印刷会社(写真はキャノンコーナーに展示されていた萩原印刷の事例)も登場しているようですし、そういうところからベストセラーが生まれるといいですね。


モリサワの「TypeSquare」は年内無料でスタート

デジタルフォントではおなじみのモリサワがいよいよクラウドフォント「TypeSquare」のサービスを開始します。

クラウドフォントとは、ユーザーがウェブを閲覧する際に表示されるフォントを持っていなくても表示できるようにするというもの。クリエイターにとっては様々な書体が使える、魅力的なデザインが可能になる、というわけです。かなフォント(漢字なし)も含めると約150種類使えるということでした。
 して、TypeSquareは2月22日からサービス開始なのだそうですが、オープン記念で年内いっぱいは無料で使えるそうです。その期間を過ぎたらどうなるの? という質問については今年12月開始予定の有料会員に登録すれば、その後もプランに応じて利用できるそうです。価格設定は入会金10500円+ページビューに応じたもので、一番安い120万PV/年で16800円とのこと。3ヶ月、6ヶ月で使える短期プランもありまして、こちらは「キャンペーンなどで目立つデザインをしたい時」のニーズを想定しているそうです。

にしても、ウェブという継続的なメディアに年間契約って? という違和感があるのも確か。そこまでお金をかけてフォントにこだわるクライアント(デザイナーではなく)がいるのか疑問が大きく残るところではあります。さらにPVで価格設定されているというあたり、思わぬ数のビューがあったらどうなるの? というところも気になります。

時間切れで聞けなかったのですが、ブラウザで本を縦書き読み、なんてあたりにニーズがありそうなのですが、そうしたあたりは想定しているのかどうか。電子書籍にもクラウドフォントのニーズはありそうなのですが、このあたりは仕組みのところがまだ勉強不足なので、機会があれば情報収集&取材をしたいと思っております。



モリサワ「TypeSquare」

「page2012」に行ってきました。

今年も池袋のサンシャインコンベンションセンターで開催された「page2012」に行ってきました。去年に引き続き、今年も電子書籍関連のセミナーがてんこ盛りで、そちらを取材に行く予定でしたが、あいにくと仕事の都合でいずれも参加できず。短い時間ではありましたが、ざっと会場を回ってきました。

会場はフロア3階分を使って行なわれていたのですが、ここ3年ぐらいはデジャ・ヴ?かと思うぐらい、出展者も出展する場所もほぼ変わらない感じ。一昨年は派手にやってたデジタルサイネージ系がほとんど無くなった以外は、だいたい同じような感じでありました。いや、iPad系のソリューションの割合がじわじわ増えていたかな。イベントのタイトルもよくよく見ると大文字の「PAGE」から小文字の「page」に変わっていて、デジタルソリューション系の出展の割合がますます増えているのは確かでありました。

電子書籍関連は2Fの展示ホールDに集まっていたのですが、こちらはおそらく一つずつ細かく見ていくと、実用的なソリューションとかもあっておもしろいと思うので、興味のある方はここを集中的に回ることをおすすめいたします。

さて、今回の個人的な取材目的はモリサワがいよいよスタートするクラウドフォント「TypeSquare」 のチェック。こちらについては別途書いておりますが、実際に始まるのは2月22日からだそうです。

もう一つはATOKを提供するジャストシステムによる文章校正支援ツール「Just Right!4 CE」の新製品チェック。展示していたのが法人向けの新製品だったのですが、Windows向けは来月中発売なのにMac版は8月の発売なのだとか。一括校正はこれからほんとニーズが高くなると思うので、ぜひ個人向けにも機能を落としてもいいから、ばんばん出してほしいものです。

行ってみておもしろかったのは、オンデマンド製本のシステムがコンパクトで性能、品質ともかなり上がっていたこと。他にもオンデマンド製本はいろいろあったのですが、キャノンのコーナーにあった萩原印刷の事例がおもしろそうでした。こちらも詳細は別記事にて。

他にも、CADデータでいろんなものをカットするレザックさんの機械など、心ひかれるものはいろいろあったのですが、個人のしかもフリーライターには直接ご縁のないものばかりだったのが残念。けれども、印刷業界の現実的な最先端技術を見るという意味ではとても勉強にはなると思うので、興味がある人は見に行ってみてはいかがでしょうか。

会場では「みどころツアー」なるものも開催されておりますので、初心者でも楽しめるやもしれません。



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