「Unreasonable at Sea」という世界から高い評価を集める11の社会起業家たちを乗せた船で世界14カ国を105日間で巡りながら、それぞれの停泊地で政府や投資家、ビジネスパートナーたちへプレゼンを行い、ビジネスチャンスや啓蒙をひろげるというプログラムがあって、最初の停泊地(正確にはハワイの次)である日本での最初のイベントが開催されるというので、そこに集まる起業家たちにインタビューするというのが目的でした。
その存在については、知人がその手伝いしているというのでたまたま知っていたのですが、それよりも株式会社ソーシャルカンパニーの市川裕康さんが「Unreasonable at Sea」と今回取材したイベントについて的確な紹介記事を書かれていていらっしゃるので、ぜひこちらをお読みください。
・グローバルな社会起業家育成インキュベーションプログラム「Unreasonable at Sea」日本寄港イベントが1/27 に開催!京都ワークショップも1/30に!
にしても、最初に話を聞いた時は正直、どうしてそんなプログラムが実現できるのか? というのが第一印象でした。11の社会起業家のほとんどがずでに何らかの実績をあげていて、自力で十分世界を回って要人にも会えるだろうし、メンターと呼ばれるアドバイザー(これが錚々たる面子)も今さら必要なのかと思っていたのです。けれども、彼らのプレゼンを直接聞いて、少し疑問が解けたように感じました。
たとえば、「One Earth Designs」は太陽のエネルギーを使った調理器「SolSource」を開発し、薪を使った調理で大事な時間を費やしたり、事故で亡くなったりしている女性を救うという活動ですが、すでに中国でそうしたニーズを求めているエリアで使われ、COOであるCatlin Powersさんらのパワフルな活動は各メディアでもとりあげられています。同じく太陽電池で使える補聴器を開発する「SOLAR EAR」もすでに実績はある程度あげているけれども、その活動をもう一歩、世界に拡げるためにはとてつもなく大きな力が必要になってきます。
つまり、すでに事業化を進め、ある程度の成功を収めているからこその問題点や壁があるのではないか。自分がよく取材するデジタル系のスタートアップは最初は華やかなデビューで注目度を集めても、その先がなかなか続かず、多くがビジネスモデルやマネタイズで問題があったりします。そうしたところを脱出する難しさもあるけれど、社会起業家にとっても『継続』という課題はまた別の視点から考える問題であり、そのためには船上でじっくり時間を使ってビジネスを見つめ直す機会が必要なのかもしれないと感じたのでした。
もう一つはこのプログラムを立ち上げたDaniel Epstainさんの魅力というのがあるやもしれません。彼は若干28歳ですが、すでに3つの会社を立ち上げ、2012年に30歳以下の30の起業家のうち最もインパクトのある人物として評されています。あのTEDフェローでもあり、複雑に絡み合った原題の社会問題を解決する活動に大きな使命感を感じていることがよくわかります。実際に話をしたDanielさんは明るくてチャーミングでとにかく前向き。でも、押しつけがましくなくて、とにかく人の話をじっくり聞いて答えてくれるという、大きな器と気さくさを同時に持ったとても素敵な人物でした。
彼はアメリカで「Unreasonable Institute」という社会起業家を育成するための合宿プロジェクトを成功させていますが、Unreasonable at Seaはいわばその航海版といったところ。参加しているメンバーもDanielさんと同じぐらい、とにかく若くてパワフルで社会に対する強い使命感を持っていて、そこにシンパシーというか、一緒に社会を変えていく力を得ようとしているのではないか。また、彼自身にとっても、世界の海を巡りながら次のゴールを目指すというのは、一つのチャレンジなのやもしれません。
惜しむらくはインタビューの時間の都合で8人のうち半分の起業家たちの話しか聞けなかったこと。けれども、一方で半分の起業家たちの声を直接聞けたのは、とても貴重な体験でありました。今回は、たまたま彼らのスタートに立ち合えたわけですが、次回はその終わりに何らかの話を聞く機会が持てれば、と思いました。
彼らのスケジュールはとても忙しくて、イベント翌日にはもう次の停泊地へと旅立ってしまったのですが、その港がなんと神戸。それにあわせて、1/30に同志社大学で「Unreasonable Kyoto "Design Thinking Workshop"」なるイベントが開催されことが急遽決まったそうです。ここは、彼らと直接話ができる貴重なチャンスなので、社会起業家はもとより、世界を変える人たちと直接話をしたい! という方々はぜひ参加されることをオススメいたします。